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【脳卒中 構音障害と舌の動き】姿勢と横隔膜

脳卒中による言語障害は、大きく失語症と構音障害に区別されます。



今回は構音障害について、特に舌の動きを姿勢から考えていきたいと思います。



舌運動による構音障害は、タ行やナ行、ラ行などで非常に重要です。



この記事では舌の神経や舌運動と姿勢、特に横隔膜との関係性を説明しながら自主リハビリを紹介していきます。


〇舌に関係する神経は?


舌の動きをコントロールしている神経は、脳神経の舌下神経と言われるものです。



舌は感覚、味覚、運動の3つの要素がありそれぞれ神経が異なります。



感覚:舌の前2/3は三叉神経、舌の後ろ1/3は舌咽神経

味覚:舌の前2/3は顔面神経、舌の後ろ1/3は舌咽神経

運動:舌下神経



今回のテーマである舌運動に関する舌下神経は、脳幹という部位の延髄にあります。


脳卒中の中でも発症部位が脳幹、小脳、大脳基底核では構音障害を生じる可能性が高くなりますがその他の発症部位でも症状をきたす場合もあります。



また発症部位に関わらず、舌運動による構音障害が見られる場合は姿勢の影響が考えられます。


〇舌の動きと姿勢の関係性


舌の動きと姿勢の関係性は、横隔膜という意識して動かすことのできない筋肉の影響があります。



横隔膜の機能

・姿勢制御

・呼吸

・発声

・嚥下




横隔膜の位置

・起始:剣状突起、第7〜12肋骨、第1〜4腰椎
・停止:腱中心




この横隔膜と舌は筋膜の繋がりによって連結しています。



横隔膜の位置や硬さはそのまま舌へ影響する可能性があるということです。



特に姿勢が体幹の屈曲や傾きが見られる場合に、舌が姿勢の影響を受け横隔膜に引っ張られることで動きが制限されやすくなります。

麻痺側への傾き


写真のように麻痺側側へ姿勢が傾くと対角線上に舌を引き込み、左に重心が傾くと右への舌運動が制限されやすくなります。


横隔膜 体幹屈曲


横隔膜は腰(腰椎)に付着しているので、体幹の屈曲が強い場合も横隔膜が後方へ引っ張られ、舌も同じように後下方へ引き込まれやすくなります。

〇舌の動きを改善するための姿勢制御


横隔膜の機能は4つ

・姿勢制御

・呼吸

・発声

・嚥下


この4つの機能において呼吸は最優先される機能で次に姿勢制御です。



この姿勢制御における横隔膜の機能が無意識に行われることで、舌運動が行いやすくなります。



発声練習でも多く使われている「パ・タ・カ・ラ体操」は口唇や舌の動きを促す効果があり、図のように発声する音によって、舌運動は異なります。

これらの舌運動を可能にするための姿勢制御には、コアマッスル・インナーマッスルが重要です。

コアマッスル、インナーマッスルと呼ばれる4つの筋肉(横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋)がお腹~背中にかけて安定することで腹圧が保たれます。



その結果、姿勢が安定し横隔膜の硬さを軽減し舌運動を改善することができます。



〇舌運動を改善するリハビリ


舌運動を改善するためのリハビリは、姿勢から評価、介入することが多いです。



舌の硬さにもよりますが、姿勢制御だけでは改善しづらい場合は舌自体への刺激なども必要になる場合もあります。



舌運動がしづらくなっている方の姿勢は、体幹屈曲、もしくは股関節の安定性が低下していることが多いので重要なポイントです。



体幹の姿勢コントロールが向上することは、横隔膜の機能向上と繋がり舌運動の改善を促します。



舌を動かす練習をされている方は、練習時の姿勢を工夫することでより舌運動を促すことができます。



姿勢を調整するリハビリ、自主リハビリを実施しながらもご自宅で座位姿勢で腰部分にクッションを入れたり、テーブルに手をついて体幹の屈曲を軽減し舌運動を促すなどの工夫も必要です。



実際のリハビリ場面では、姿勢のコントロールできる幅と肋骨の硬さや傾きなどを見ていきます。



特に体幹の屈伸、側方への重心移動は体幹の安定に必須な要素です。




〇舌運動を改善する自主リハビリ

1.体幹の屈伸


体幹は伸びている状態の方が筋肉は活動的ですが、常にその姿勢でいることが最善ではありません。

体幹の屈伸

写真のように体幹を伸ばしたり、曲げたりできる前後の幅が重要になります。


体幹の屈伸だけではなく、この姿勢だけが良いということはなく柔軟に姿勢を変えることができるのが理想の姿勢コントロールです。



動ける幅が向上することは、体幹の安定に繋がり舌の引き込みを軽減します。


2.左右への重心移動

体幹の屈伸と同様に左右へ動ける幅が大切です。

左右への重心移動

左右への重心移動は、股関節の安定性を高めるうえでも非常に重要な動きになります。



また横隔膜が付着している下部肋骨の動きも促せるので有効的です。


3.仰向けで上肢挙上

自主リハビリで行っている方も多いですが、仰向けで上肢を挙上します。



腕の動きに伴い肋骨が開き、背骨を伸ばすことができます。



麻痺側の肩が痛いなどの場合は、非麻痺側上肢だけでも効果は期待できます。

上肢挙上

挙上し2~3回呼吸して降ろすを繰り返すことで、横隔膜の柔軟性を高めることができます。





4.下部肋骨の可動性向上

下部肋骨は左右へ開きながら動いています。



その動きを促すことで、横隔膜の可動性も引き出しインナーマッスル活動で体幹の安定につなげていきます。



ご家族にご協力いただける場合は、左右同時に行うと効果的です。



また写真では座位ですが、仰向けでも可能です。

下部肋骨


①息を吐く際に軽く押す


②息を吸う際は、吐くときに押していた力の半分で押し続ける



10回程度行うことで徐々に下部肋骨が開き、呼吸が深くなっていきます。



5.立位での舌運動

全身の筋肉は仰向けより座位、座位より立位で活動的になります。

立位



舌運動や発声などにおいても体幹の安定は必要になるので、立位で行うこともあります。



特に体幹や股関節の伸展活動(関節角度ではなく、支えようとする活動)を高めることで舌運動を促します。



立位姿勢が可能な場合は、現在行っている舌運動の練習や発声を立って行うことも有効的になります。


〇さいごに


舌運動の低下による構音障害では、横隔膜と姿勢からの影響を考慮する必要があります。



舌の動きだけを練習されている方は、体幹や股関節の安定性や姿勢などを加えて行うことでより質の高い練習が可能です。



最後までお読みいただきありがとうございました。



引き続き投稿していきますのでよろしくお願いいたします。


佐藤