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脳卒中後の手指の分離運動 硬く握りこんでしまう原因や練習方法まで解説

 脳卒中(脳梗塞、脳出血など)後の後遺症として、手指が握りこんでしまうことや動作時に手指から腕全体が硬くなってしまう症状があります。

 手指は人の体の中でも最も繊細で細かな動き(手指の分離運動)が可能な反面、握りこんでしまうことや硬さによって生活場面で積極的に手を使うことが制限されてしまうこともあります。

 今回の記事ではなぜ手指が握りこんでしまうのか、上肢全体からの影響や改善方法まで紹介していきます。

改善したい思いに応える
脳卒中リハビリ

 当施設は自費リハビリ施設で、保険内のリハビリだけでは不足している現状を打破するために自費/保険外でリハビリを提供しています。自費でリハビリ?と思われる方もいるかもしれませんが、退院後のリハビリは入院中に比べると極端に減少してしまうのが現実です。

 退院後でも改善する方がいるのに保険内では制度や制限があり、療法士にとっても「もっとリハビリをすれば良くなるかもしれないのに」と現実と理想を感じています。

 自費リハビリ(保険外リハビリ)は時間や頻度、場所などの制限がなくリハビリを受けることができます。退院後の生活やお身体の状態に合わせてご自身・ご家族で選択し改善の可能性を広げることができます。

 当施設のリハビリ内容や理論などはYouTubeで発信していますのでご視聴ください。

 変われる・改善できる可能性を見つけ、一緒にゴールを目指しませんか?



〇目次
 1.分離運動とは
 2.なぜ手指が握りこむ、曲がってしまうのか
 3.手指の分離を促す上肢機能とは
  ―①仰向けでの上肢の動き
  -②上肢を後方に引き込まない
 4.手指を動かすと硬くなる理由
 5.手指の分離を促す上肢機能の練習
 6.まとめ

 動画でご視聴されたい方はこちらから

 繊細な動きが求められる手指は、リハビリ技術も細かなタッチや全身状態からアプローチすることが重要です。

1.分離運動とは

 分離運動は各関節を意識的、無意識的に別々に動かすことを指します。腕を挙げる際に肘や手指が曲がらずに動かすというのは肩関節の分離運動と表現されます。

 手指における分離運動とは、指を1本1本動かすことや目的の動作に合わせて指を動かすことで他の身体部位や関節に比べて非常に動きにパターンが複雑となることや手で持つ物によっても柔軟に手の形を変えることなどが求められます。

 こういった手指の分離運動を促すうえで、動かしたい指の随意性が改善してきても他の指も一緒に動いてしまうことや過剰に力が入ってしまうなどの症状を言われる場合が非常に多いです。

2.なぜ手指が握りこむ、曲がってしまうのか

麻痺手

 まず手指の機能を改善するには、指が開いている状態を促すことが非常に重要な部分になります。手指や上肢に麻痺が生じている患者さんの多くが歩行や動作において手指だけではなく上肢全体が硬くなってしまうことや、実際に腕を挙げる、手を伸ばして物を握ろうとした際に指が曲がってしまうという状態が見られます。

 この状態となってしまう身体機能を脱することが手指の改善の基礎、ベースになるので原因をしっかりと理解することが重要です。

 様々な姿勢の変化や立ち上がり、歩行において上肢が硬く曲がってしまうことや指が握り込んでしまう場合の多くは今の姿勢のとり方と姿勢の不安定性が背景にあります。

 患者さんの中には上肢や手指の改善を希望した時に、体幹もしくは股関節や下肢などのリハビリも必要ですと言われたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば姿勢が非麻痺側に寄ってしまって体全体も非麻痺側に傾いているとします。その場合に麻痺側の上肢を動かす時も重心は非麻痺側にあるので、麻痺側の上肢を動かそうとすると非麻痺側の安定性に頼ることになります。一見体の安定性は高まりますが、動かしたい麻痺側の上肢と安定性がある非麻痺側では斜めの関係性になります。

上肢機能

 こうなってしまうことで、麻痺側上肢を本来支えてくれる肩甲骨や麻痺側体幹や股関節の安定性が機能しなくなることが考えられます。

 ・麻痺側の肩と麻痺側の股関節の関係:同側の関係性で距離が近い
 ・麻痺側の肩と非麻痺側の股関節の関係:斜めの関係性で距離が遠い

 この2つを比べると同側の関係性の方が明らかに距離が近くなり、近いということは運動における支点と実際に動く上肢も近くなるので力は最小限になりますが、斜めの関係になると支点との距離が大きくなるのでそれだけ筋力も必要になります。

 また筋力が必要がなるだけではなく実際には麻痺側の上肢が重く感じるのでそれを支えようと過剰な出力になることも多いので、これが上肢全体の筋緊張を高めて腕全体や手指が曲がってしまうことに影響しています。

 上肢のリハビリにおいて斜めの関係性になることで、腕を挙げると腕全体が前ではなく外側に開いてしまうこともあり動かす部位と安定が斜めなので動き自体も斜めになってしまう、この症状も非常に多くの方が悩む部分です。

 上肢をまっすぐ前に上げようとすれば必ず下方向に安定を作ることが必要になりますが、これは体幹が伸びることや麻痺側の股関節の安定性が必要な理由になります。

 こういった背景を考えると上肢などの改善に麻痺側の股関節や下肢へアプローチすることの重要性が分かってきます。しかしあくまで1つの方法であり体幹や股関節、下肢だけにアプローチすれば改善するということではなく必ず同時に並行して介入していく必要性があります。

 上肢機能を改善するには、その基礎となる体幹や下肢からアプローチすること、そして麻痺側上肢自体の機能へアプローチすることが大切になります。上肢への介入においても体幹や股関節を意識することで双方の機能を高めながら行うこともできるので、これは患者さんの身体機能や症状に合わせて判断していくことが必要になります。

トリアのリハビリ情報

脳卒中や神経疾患等による症状の改善希望やご相談の方は、HPの情報をご参照ください。

3.手指の分離を促す上肢機能とは

 手指の分離運動を促すためには、手指を活動させるうえで上肢の動きを考えなけけばいけません。特に腕の動きの中で過剰に力が入ってしまったり、腕を引き込むような活動になることで手指の硬さや握り込みが強くなります。

 手指の分離を高めていく上肢機能の2つのポイント

-①仰向けでの上肢の動き
 仰向けで寝ている姿勢で腕を挙げていく動きで手指が緩んだまま動かせるかどうか、ここが非常に重要なポイントとなります。

 仰向けの姿勢で腕を動かすことは姿勢のコントロールや重力の影響を除いた腕の随意性、コントロールを練習したり療法士であれば評価するために重要な姿勢です。仰向けの姿勢で腕が挙がりづらい場合には座位や立位ではより難しくなるので、まずは仰向けで代償が少ない形で挙上できることを目指します。

 そしてポイントとなるのが、仰向けで腕を挙げた際に手指が緩んでいるかという点です。

 腕を挙げた際に手指が曲がってしまう、握りこんでしまうのは肩周辺の安定や腕の重さを代償するために腕全体の緊張が高まりすぎている結果になるので、仰向けで手指が握りこまずに脱力に近い形で挙上できることが大切です。あくまで手指は腕が動いて最終的に何かを掴んだり、つまんだりすることが求められるので腕の動きとは完全に分離、異なる活動が必要になることを考えると腕の動きでいかに手指の力を代償的に使わずに腕だけを動かせるのかを見ていくことが必要になってきます。
 

―②上肢を後方に引き込まない
 肩甲骨にはプロトラクションとリトラクションという動きがあります。

 ・プロトラクション:肩甲骨を前に動かす動き
 ・リトラクション:肩甲骨を後方に退く動き

 腕を挙げる、手指が曲がらずに物を握ることを考えていくと腕を挙げる際や物に手を伸ばしていく時に肩甲骨が前に動いた位置(プロトラクション)を保持し続けることが必要になります。

 肩甲骨が後方に退けてしまうとうのは、肩の安定性が低下していることが最も影響しますが肩甲骨が後方に退ける動きで腕全体、手指も後方に退くような力が生じてしまいます。この力が動作時に手指の曲がりや握り込みを強くしてしまうので手指の改善のために肩甲骨の可動性や安定性は非常に重要な要素となります。

 肩甲骨のプロトラクション、肩甲骨を前に動かすための練習はこちら

 手指の改善に必要な上肢機能2つのポイントを評価、リハビリしていくことで上肢の動きに伴う手指の分離を促すことに繋がっていくので確認しながら練習を選択してください。

4.手指を動かすと硬くなる理由

 ここまでは手指の硬さが姿勢や上肢全体、力の入れ方などの側面から解説しましたがそれに加えて直接的な指の硬さ、特に動作時における硬さの原因を考えていきます。

 1つ患者さんや療法士の方も行ってほしい確認があります。患者さんであれば非麻痺側の手で行っていただき、非麻痺側の中指だけをテーブルの淵に当てて軽く中指でテーブルを押してください。そのまま人差し指を曲げ伸ばしすると、中指にも力が入るように感じると思います。

指の硬さの原因

 今おこなっている確認は、中指に抵抗をかけて意図的に硬さを生じさせている状態になります。これが麻痺側の指を分離させてバラバラに動かそうとしても他の指が曲がってしまったり、動きについてきてしまう背景になります。

 先ほどの意図的な物はかなり意識すれば中指に力を入れなくてもできますが、人の動きというのは手指だけではなく全身的に抵抗に対して抗する、反対側に押し返そうとする活動が必ずあります。

 以下のような身体的な活動を維持することに作用しています。
 ・重力に逆らって体を伸ばす、伸ばし続ける
 ・何か重い物を持った時に支える
 ・立ち上がろうとすると無意識に足が支えてくれる
 ・杖なしで歩けても杖を持つと杖に体を預けてしまう

 今の内容を手指の硬さに例えると、手指に硬さがある、曲がっている状態というのは筋肉が縮まる方向に力が入ってしまっているので動かそうとした際に常に手指に抵抗感がある状態になります。その状態で指を動かそうとすると、例えば人差し指を動かそうとしても必ず硬さがある他の指も動いてしまいます。

 この抵抗感というのは、重力や物だけではなくご自身の筋肉の硬さや歩行でいえば足底や指先を床に擦ってしまう場面なども抵抗感として脳が感知してより強い出力を求め、より硬さを強めてしまうことに繋がっていきます。

 こういった背景があるので、手指の分離を促すための上肢機能として腕を挙げた際に手指が緩んでいる状態であることが非常に重要になってきます。

 今回は手指の分離についての内容ですが、この硬さがある部位に対して出力してしまうというのはどの身体部位でも言えることなので硬さを和らげる、特に筋緊張をコントロールするというのは脳卒中後の様々な身体機能を改善することに必要な要素であり、継続的にリハビリ、ケアしていくことが大切です。

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当施設では日ごろの店舗でのリハビリや訪問リハビリ等に加えて、当事者の方や患者さんへの情報発信を行っております。本サイト上でのブログの更新、YouTube、各SNSなどを取り組む中でより患者さんが感じている疑問や不安などの声を聞く様になりました。その疑問などにお答えして、リハビリやご自宅での自主リハビリが良い方向へ進むようにトリアの公式LINEでリハビリ関する内容についてお伝えしています。

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5.手指の分離を促す上肢機能の練習

 手指の分離を促すための上肢機能に関する練習としては、先ほど紹介した仰向けで腕を挙げる動きで行っていきます。重要なポイントとしては挙げ始めに手指が曲がらない、硬くならないということです。※こちらの練習は動画でご視聴いただくとより分かりやすいです。

 腕を挙げ始める、動かし始める瞬間というのは自身の腕の重さや長さに対して適した筋肉の部位に力が入ることや出力の強さがコントロールされていることが理想です。これが代償的に別の筋肉に力が入ってしまうことや動かす方向が異なる場合、力が強すぎてしまうことなどで手指が曲がってしまう原因となります。

 仰向けで腕を挙げる練習をする際に、少しだけ腕全体をベッド面から浮かせます。この動きで手指が硬くならないように出来るだけ力を最小限に動かすことを意識してください。このベッド面から腕を浮かした際に手指の硬さが出ない方は少しずつ角度を上げていき、硬くなりそうなぎりぎりまで挙げて降ろすことで徐々に角度を広げていきます。

 この練習は単に筋トレのように感じますが、脳や神経系に少しずつ負荷をかけている練習でコントロール出来ている場面とコントロールしづらい場面の神経活動を繋いでいるようなイメージになります。これはどの練習にも応用できて、代償動作を伴いながら動かせるからと大きく動かし続けてしまうとその代償動作で運動が記憶されてしまうので代償が少ない動きの中で動かせる範囲と代償が出てしまう範囲の動きを繋いでいくことが重要になります。

 動き、動作は筋肉の活動が分かりやすく説明もしやすいですが、その前提には脳や神経活動が必ずあります。筋力低下しているように見えても実際は先ほどの動きと動きの繋がりが不明瞭であったり、神経活動が過剰になっている、もしくは不足しているなど様々なケースがあります。

 ここは療法士の方は必ず考えて欲しい部分で、患者さんの症状を筋肉や姿勢などで考えるまえに前提として神経活動がどうなっているのかを踏まえたうえでどこにアプローチするのか、なぜその筋肉の状態を変えなければいけないのかを判断してください。硬いから伸ばす、弱いから鍛えるだけでは脳や神経系へ必要な情報や刺激をすることができないので神経系を踏まえたうえで、実際にアプローチする部位や筋肉を考えてみてください。

6.まとめ

 脳卒中後のどの症状にも言える事ですが、この原因だけという事ではなく、その症状を全身から見た場合と局所的に症状がある部位を見た場合、これを両方の側面からアプローチすることが非常に重要になってきます。

 手指の分離でいえば今回のポイントはいかに手指を緩めた状態で上肢を動かすことができるかという点でしたが、反対に手指の状態を変える、改善していくことで上肢全体に良い影響を与えられる場合もあります。どちらを優先すべきかは、患者さんの体の状態や身体機能、症状などを見て判断する形にはなります。

 手指を改善するために腕全体、上肢全体の動きも関与していて並行してリハビリする必要があるんだなと感じていただいて、手指の練習に加えて上肢の動きを安定させるような内容も行ってみてください。

〇執筆・監修者情報
 佐藤浩之:施設長
~経歴~
 1991:千葉県生まれ
 2013:国家資格(理学療法士)を取得し、千葉県内の病院へ入職
 2015:大手自費リハビリ施設へ入職し施設長を経験
 2017:JBITA公認ボバース成人片麻痺基礎講習会修了
 2022:トータルリハビリテーション トリアを開設