トータルリハビリテーション
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豆知識
脳卒中を発症された方で歩行時の悩みでも多いのが分回し歩行。
麻痺側の下肢を真っすぐ振り出せずに、外側に開きながら振り出してしまう歩容です。
特に装具を着けている場合
足首が固定されていることで分回し歩行になりやすく、膝や足関節を動かす角度や筋活動が減ってしまい2次的な硬さや筋委縮を引き起こします。
今回は分回し歩行が生じてしまう原因やリハビリ、ご自宅での自主リハビリをお話していきたいと思います。
下肢の振り出しを股関節から促す自主リハビリはこちら
歩行時に下肢が股関節ではなく、骨盤や体幹などから振り出してしまうことも分回し歩行の原因になります。
動画での分回し歩行の解説はこちらから
分回し歩行という歩容、症状でも原因は1つではなくいくつもありますので原因を知ることで改善へ繋がります。
〇分回し歩行とは
分回し歩行:足を振り出す際に、外側に弧をえがいて振り出す歩容
様々な原因で足を真っすぐに振り出すことが難しく、足を引き上げる(足を床に擦らないために)のと同時に外側へ振り出します。
分回し歩行の場合のほとんどが膝が曲がらずに、伸びきった状態で足を振り出します。
〇分回し歩行の原因
原因は1つではなく、いくつかの原因が絡んでいます。
1.足を曲げられない
足を振り出す際に股関節や膝を曲げることが難しいため、外側に開き足を浮かせることで足と床の距離をあけて振り出します。
2.麻痺側への荷重が足りない
足を振り出すためには床反力が必要
床反力は足で床を蹴った結果得られる反力で、この力で足は持ち上がります。
足で床を捉える、もしくは蹴るためには必ず一度体重をかけなければいけないということです。
麻痺側への荷重は、分回し歩行の軽減に重要です。
3.重心が非麻痺側へ傾く
麻痺側を振り出す際に必要以上に非麻痺側へ重心を乗せると、平衡反応が生じます。
平衡反応:バランスが崩れそうになった場合に姿勢を調整する反応
例えば体を右に傾けていくと体幹だけでは支えきれずに、左足が外側に開きます。
足を開くことで体がそれ以上、右に倒れないようにしています。
大きくはこの3つになりどれかの原因だけではありません。
脳卒中や神経疾患等で足が麻痺してしまった後に歩行訓練を開始します。
力が入りづらい中でもどうにか足を前に出すためには、非麻痺側へ重心を乗せて麻痺側を浮かせます。
しかしこの歩容を続けていると足の力が高まってきても、分回し歩行が持続してしまうことがあります。
それは3つめの平衡反応が大きな原因。
体を傾ける→平衡反応→足を振り出す
平衡反応は意識的なものではなく無意識的なバランス反応です。
この平衡反応が出ている状態で足を振り出すと、足の外側の筋肉で足を動かしていることになります。
本来は足を振り出すためには、足全体の前後の筋肉が活動しなければいけません。
平衡反応で足を振り出し続けると、この前後の筋肉へスイッチが入りづらくなります。
その結果として、麻痺側で支持する際もお尻の筋肉が活動しづらく足の外側だけの支持になり骨盤が麻痺側へ流れてしまいます。
また平衡反応での振り出しは、内反を引き起こしやすくなります。
(内反の原因についてのページはこちらから)
〇分回し歩行のリハビリ
分回し歩行を軽減するためには、3つの原因を解決していくことが重要になります。
その他の症状なども考慮する必要がありますがリハビリの流れを書いていきます。
1.重心の位置を変える、感じ取れる
まずは重心についてです。
麻痺側へ重心をのせづらい、または非麻痺側へ過剰に重心を乗せている姿勢を調整していく必要があります。
重心を左右や前後に移動させる場合は、体幹の位置が重要です。
麻痺側へ重心を乗せようとすると麻痺側の下肢で「踏ん張ろう」と力をいれてしまう場合があります。
これ自体は必要な事ですが、必要以上に踏ん張ることで突っ張りかえって重心を乗せられないこともあります。
そこで重要なのが体幹です。
例えば右に重心を移動すると体幹の右側が伸びて左側は縮みます。
この機能が体をまっすぐに保ってくれ左右への重心移動を可能にしており、この機能は寝ていても、座っていても、立っていても同じなので様々な姿勢でこの機能を高めていきます。
一定の位置まで重心が移動すると「これ以上は倒れる!」と脳が判断して、反対方向へ体幹を押し戻す反応を高めることも大切になります。
これらの体幹からの重心移動が可能になると、足に体を乗せることが可能になってきます。
足に体を乗せる
この意識も凄く重要です。
そして足の上に体が乗る感覚を掴むことで、歩行中にも体が傾くことを軽減していくことができます。
2.股関節から足が動くことを経験する
分回し歩行では足の各関節があまり動かないことが特徴です。
分回し歩行において足は前に振り出せてはいますが、体全体の反動や骨盤で引き上げる動作を使っています。
そのため股関節から足が動くという感覚や経験を重ねていくことが必要。
しかしこの股関節から動くという感覚は、先ほどの平衡反応による足の持ち上がりを軽減しないといけません。
以上の2つのポイントが分回し歩行に対するリハビリ内容です。
それだけ?と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、分回し歩行を改善、軽減するための要素のほとんどがバランスです。
〇分回し歩行を軽減する自主リハビリ
ここまで紹介した原因やリハビリ内容をご自宅でも繰り返し行えるように方法も紹介していきます。
動画で見たい方は、当施設のYouTubeをご覧ください。
姿勢別に紹介するので、可能なものを選んで実践してみてください。
1.仰向けでの練習
仰向けでは体幹の左右差と左右への運動の幅を向上させる練習を紹介します。
非麻痺側の上下肢を麻痺側へ伸ばす
上肢であれば麻痺側の肩を触る、麻痺側側のベッドの端を触るように伸ばしていきます。
下肢でも同様に麻痺側下肢の上に足を組む、足でベッドの端を触りにいくように動かしていきます。
非麻痺側へ体幹や重心が偏ると、正中位を超えて麻痺側への活動が減少しています。
正中位を超えて上下肢を動かすことで、体が真っ直ぐになる、立位での麻痺側への荷重の準備ができます。
2.座位での練習
座位では股関節から足が動くための準備をしていきます。
麻痺側の足底をしっかりと床につけ、踵だけ持ち上げます。
この時にできるだけ母指球で支えてください。
足先で踏ん張った分だけ踵が浮き、結果的に股関節が動きます。
この時のポイントが骨盤が動かないことです。
骨盤で足を引き上げないように注意して、股関節が動く感覚を繰り返し覚えてください。
この練習は足首の練習で行うことが多いですが、意識するポイントを変えることで練習の目的も変わってきます。
3.立位での練習
最後に立位では実際に麻痺側の下肢を振り出す練習です。
立位では平衡反応での足の振り出しを最大限に減らした状態で練習を進めていきます。
平衡反応を軽減させるには、非麻痺側への過剰な重心移動や体幹の傾きを抑える必要があるので非麻痺側の上肢を上まで挙げます。
可能であれば上肢を挙げたまま麻痺側を振り出します。
バランスが不安定であれば挙げた手を壁につけて振り出す練習を行ってください。
手を挙げることで全身の活動が上に向くので、非麻痺側への過剰な重心移動を抑えつつ体幹の傾きなども軽減できます。
以上の3つが自主リハビリの内容です。
〇さいごに
歩行は足だけでなく全身運動です。
足以外の要素も取り入れつつ練習することでバランスが向上し、足も動かしたい場所に動かせるようになっていきます。
杖や装具などの有無でも変わってくるのでより詳しく知りたい、聞きたい方はお気軽にご連絡ください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
佐藤